株主優待券を目的に投資したら逆に生活が不自由になった話

大学を卒業し、就職してからも実家を出ず、平凡なサラリーマンとしてコツコツと貯金を続けていた私は、30代を迎える頃には貯金が大きな金額になっていた。

この貯金をすべて普通預金に眠らせるのはもったいないと考えるようになった。

 

昨今、普通預金金利は0.001%程度だ。この金利だと、仮に1000万円を銀行に預けたとしても、1年後の利息はわずか100円だ。

 

よし、資産運用にチャレンジしよう。と思った。

 

そう思いたったのが、2017年のことだ。

3年後には東京オリンピックの開催が決定しており、インバウンドの経済効果も期待できるので、投資をするには絶好の機会だと思った。

 

株式投資についてネットで調べたところ、株式投資のコツは「長期・分散」だという。

なるべく多くの金融商品を長期的に保有することで、リスクを分散させることができるという情報を得た。

 

さらに、「株主優待制度」という、日本独自の制度も興味深いと思った。

一部の企業は、株主に対して優待制度を設けている。

自社製品を贈答したり、運営施設での買い物券や食事券、入場券などを提供したりと、様々な企業の優待サービスにも魅力を感じた。

 

早速、証券口座を開設し、自分の興味のある優待株をいくつか買った。

マクドナルド、丸亀製麺すかいらーく等、飲食チェーンを中心に、自分の好きな企業を基準に選んだ。

私はディズニーランドも大好きなので、施設を運営するオリエンタルランドの株も買った。

 

それからというもの、企業から定期的に優待券が届くようになった。

優待券を使って好きなレストランで食事したり、施設を利用したりできることに感動と楽しさを感じた。

 

調子に乗った私は、さらに多くの優待株を購入した。

吉野家、鳥貴族、出前館幸楽苑不二家コメダ珈琲ビックカメラなど、保有銘柄は次々と増えていき、投資を始めてから3年程度で、40銘柄以上の優待株を買った。

 

当初は、様々なレストランで食事したり、施設を利用したりできることに楽しさを感じていたが、次第にその感情は薄れていった。

 

優待株を多く保有しすぎたことで、それを管理する手間が増えたり、消費が追いつかなくなったりしていった。

全ての株主優待券には有効期限があり、期限までに使わなければただの紙切れになってしまう。実際に、使わないまま期限切れになってしまうこともあった。

 

優待券が期限切れにならないよう、スマホのスケジュール機能で、優待券の種類と期限を管理し、期限の近い物から使うようにした。

使いきれないものは、金券ショップで売ったり、家族に譲ったりもした。

 

時には、「今はラーメンを食べたい気分だけど、ステーキ屋の優待券の期限が近いから、ステーキを食べよう。ちょっと重たいけど」などと、自分の意向とは違う行動をとらなければならないこともあった。

基本的に外食はハイカロリーのものが多いので、体重が少し増えてしまい、健康にも影響が出てしまった。

 

優待券が次々と届くことに苦痛を感じることがあった。

そんな生活を3年近く続け、ある時ふと気づいた。

 

「時間的、経済的な自由を得るために投資を始めたつもりだったが、投資をすることで逆に不自由を感じている。」

 

私にとって、「時間的、経済的な自由」とは、「食べたいものを食べる」「好きなものを買う」「やりたいことをやる」「やりたくないことはやらない」ということである。

 

株主優待券を使うために奔走する生活は、逆に株主優待券に使われている」という状況になっていた。これでは本末転倒だ。

 

ある日、株主優待券を使ってラーメンを食べたことがあった。

そのラーメンは優待券により無料で食べることができたが、その株は5万円の含み損を抱えていたので、

「高けぇラーメンだな!!」

と思った(笑)

 

また、優待サービスは企業の意向により、突然廃止されてしまうこともある。

実際に、出前館の株は購入した後に優待サービスが廃止された。

 

優待目的の投資は疲れるし、リスクも多い。

資産運用の方法を考え直さなければならないと反省した。

 

もっと簡単な資産運用の方法は無いだろうかと調べたところ「インデックス投資」という方法を知った。

インデックス投資とは、日経平均株価や、NYダウ平均株価など、市場全体の値動きを目指した投資である。

全米株や、全世界株など、幅広く分散された商品を含む投資信託を購入すれば、年間の利回り5%は目指せるそうだ。※もちろん減る場合もある。

 

私の保有していた株の優待利回りは2~4%程度のものが多く、5%を超えるものは少ない。

優待株に投資するより、インデックス投資の方が効率的だと考え、保有している個別株をほぼすべて売却し、インデックス投資に切り替えた。

それから、株主優待券が送られてくることは無くなった。

精神的な負担がなくなり、とてもスッキリした気持ちになった。

 

株主優待券の消費に奔走した数年間を過ごしたが、この期間でも良いことはあった。

優待株ばかりで構成されたポートフォリオだったが、分散投資はやはり効果があったようで、総合的に運用益は大きくプラスだった。特にオリエンタルランドの株は買ってから3倍近くも上昇し、驚いた。

 

ポートフォリオ・・・金融商品の組み合わせのこと

 

また、優待券がきっかけで、普段は行けないような施設や飲食店に行くことができた。

 

アミューズという芸能プロダクションの優待券で、今はもう閉館してしまった「東京ワンピースタワー」に行くことができた。

ルフィたちの魅せるショーはとてもクオリティが高く、原作ファンの私も大満足のショーだった。

 

オリエンタルランドの優待券で毎年ディズニーランドに行くこともできた。

コロナ禍にも負けず、笑顔で接客するキャストたちの姿に胸を打たれた。

 

このように、最初からインデックス投資をしていたら得られなかったであろう「楽しい経験」をたくさん得ることができた。

気に入った飲食店も何軒か出来たので、今度は自分のお金で、行きたいタイミングで利用したいと思う。

 

終わり。